理事長コラム/Column
第1回/主語の無い日本人
「過ちは二度と繰り返しませぬから」と主語のない言葉を慰霊碑に刻んだのが、約70年前の日本人。敗戦後、二つの原爆を受け、何の責任もない市民を殺されたが、アメリカへの報復は考えなかった。しかし中国や韓国は世代を超え、従軍慰安婦や侵略問題などで、末代までも恨みを消すことはない。
これが日本の自然がはぐくんだ誇るべき日本人のDNA「何事も水に流すこと」かもしれない。確かに日本人は大戦中、大陸半島の人々に酷いことをした。それは原爆二つより過酷だったかもしれない。今や日本人が恨みを捨て、中韓両国は捨てずに燃やし続けているが、そこには敗戦国というだけでは説明できない何かがあると、作家の樹のぶ子氏が新聞に寄稿していた。
年末には、衆議院選挙があり「景気を良くし、日本を取り戻す」という政党が圧倒的に勝利をした。1昨年の3.11には東日本大震災があり、加えて先の原爆投下に匹敵する原発事故があり、未だに30万人以上の福島県人が避難民として故郷を追われ、長い絶望と悲しみとの戦いをしている人のことが焦点にならなかった。70年前の「二度と過ちを繰り返せぬ 」という誓いの言葉はどこに行ってしまったのか。「人災」ではなく「天災」であるから「過ち」ではないとでもいうのだろうか。おカネにしがみつくしかない日本人には「景気を良くする」ことはすぐ納得するが、「日本を取り戻す」などという抽象的な言葉に簡単に騙されてほしくはなかった。少なくとも取り戻すものは日本などではなく「福島の緑と風と土と水」を取り戻さなければと声を大にして言うべきだった。今回の原発事故は簡単に「水に流してはならない」事故だった。
私どもは昨年、農水省の稲ワラ、堆肥除染モデル補助事業に採択され、過熱水蒸気を使ったセシウム濃縮減容化システムの実証事業を行い、昨年10月に実用化の目処が立った。今年は約6000以上ある放射能汚染稲ワラ、牧草、堆肥、果 樹選定枝などの除染に福島県や環境省などの指導を得ながら挑戦し、「福島の緑と風と土と水」を取り戻す行動を起こす。
しかしながら阿武隈山地の広大さなどを考えると65歳以上の団塊の世代を中心とて10年程度かかるとしたら、延べ数十万人のボランテアの参加が必要となり、さらにボランテアの宿泊や交通 費などの費用も必要となってくる。今後私どもにはボランテア活動への募集や各種団体などからの助成金や寄付金などを集めなければならない仕事が待っている。今年もよろしくお願いいたします。