理事長コラム/Column
第6回/午年を迎えて
今年は午年です。昨年、日本の誇る名コラムニストである天野祐吉氏がお亡くなりになりました。彼のコラムで印象に残っている「馬」に関する言葉がありますので、ご紹介してご冥福をおいのりいたします。
「人間的な速度の限界」は「馬車」に乗っている時の速さである。それを超すと、周りの風景はどんどん流れ始めて、目に止まらなくなる。見えるのは遠景だけで、身の周りの小さな花やそこに住む人間などは存在しないも同であります。それはいいことでしょうか?どこかこの世は歪んでいませんか?と問いかけて亡くなってしまいました。
当然、新幹線などの速さが基本となっている現代では、2011年の東日本大震災や原発事故で、今でも避難住宅に暮らしている14万人の方々の顔などは、もうすでに見えなくなってしまいました。さらに2020年の東京オリンピックやリニア新幹線などの開通などに注目が集まり、ますますより速い世の中を作ろうとしている現状をみると、何か世の中の歪みが止まらなくなってしまっているようです。
確かに、より早く、より高く、より強くといった近代都市文明のおかげで、私どもは便利で快適な生活を享受いたしました。しかし人生はすいすいとは行きません。近代都市文明の粋を集めた原子力発電所もまさかの事故を起こしました。歩く道の先々には、次から次へと「踏切」のようなものがあって、否が応でも待たされることも「人生」と思います。
そういった意味で、今年は「馬車」に乗っている時の速度で、「踏切」の前で立ち止まって、この近代都市文明を考えてみる必要があるのではないだろうかと思います。
私どもが今取り組んでいる再生可能エネルギーや省エネなども、馬車に乗っている時の速さであり、リニア新幹線の速さと競争して勝てるわけはありません。しかし近代都市文明の危うさと、それに見放された農山漁村には「馬車」の速さで、ゆっくりと安全と安心を確認しながら地域おこしをしていくことも大切ではないかと思います。
今年もよろしくお願いいたします。
2014年元旦