理事長コラム/Column
第8回/ピーター・ドラッガーの予言
1970年初期は約50年。1983年は30年。1999年は12年。2008年は10年。今や会社の寿命は10年を切っているという見解もある。一貫したデータがあるわけではないが、大きなトレンドとして、会社が繁栄を謳歌出来る時間は急速に短くなってきている。もはや会社という概念は晩年であることが分かる。このペースでいくと会社が終わるのは2025年ころかもしれない。言っておくが、このことは2025年になると、目の前から会社がすべてなくなるということではない。このライフスタイルが終わったところで、長い衰退に向かうということだ。
こういった寿命の短さでは社員が育つ前に会社が歳をとってしまう。今、会社の寿命を6年としてみると導入期、成長期、成熟期が各2年となる。これでは人を育てることなどは出来ない。こうなると事業を立ち上げた人が全部仕事をして、後の人は手足のように振り回されておしまい。中間管理職も不要で、ブレーンとオペレーターだけの集団となってしまう。人を育つ必要のない仕組みとなっていく。こうなると事業立ち上げを経験した人は、その気になればいつでもフリーとして働き始める。会社に属せずに出来ないことはなくなってしまう。以前であれば会社に属することで、影響力を持てた。肩書きもあるし、動かせる資金も大きかった。しかし現在は自己判断で動かせる資金はほとんどない。立場が上になると面倒な仕事や人間関係を背負い込む。もはやフェースブックネットワークで簡単に優秀な人材に巡り合える。
ピータードラッガー
2002年に出版した「ネクスト・ソサエテー」はNPOが社会の中心を担っていくと予言した。私はいくらドラッガーであっても日本には当てはまらないとおもった。なぜなら寄付や慈善団体は日本にはなじまないものだと思われたからだ。当時の経営トップは企業活動を行って、税金を払えば社会貢献活動は不要だと言っていた。NPOより、MPO(More Profit Organization)である。それから10年がたち、今はどうなっているか。企業の数は150万社であり、5万団体がNPOとなっている。
ビジネスの社会では社会性と収益性は矛盾するといわれてきた。つまり社会にいいことを行っても儲からないということだ。しかし今は社会にいいことをしないと儲からない時代となっている。その一例が障害者雇用に熱心な潟AイエスエフネットがグループNPO慈善チャリテー駅伝を企画した。NPO活動の資金になればという思いだった。広告などはほとんどなく初年度は540人、次年度は2030人となった。参加費は1名3000円であった。ありがたいほどの資金(6,090,000円)が1日にして集まった。
このような事業は今や社会的活動によって広がる道筋が出来ている。そして社会的事業ならNPOのほうが柔軟かつスピーデーに出来るのである。かつて企業内ベンチャーがはやったが、今後は企業からスピンオフするNPOが出てくるのではないかと予測している。実際には会社を新設するよりはNPO、一般社団法人などの設立に向かっている。今からはドラッガーが言うとおり、NPOが会社を逆転していく時代が到来するかもしれない。
イモ虫は食べれば食べるほど大きくなる。しかし成長が続くにつれ、動かなくなる。かつて柔らかだった皮膚も醜くカサカサとなる。このまま死んでしまうのだが、その内部では大きな変容が起きている。日本企業は今このサナギの段階にいる。蝶として飛び出すか、このまま死んでしまうのか。既存の枠組みを乗り越え、新しい枠組みを作らなければならないようだ。MBA(マスターオブアドミストレーション)からMCA(マスターオブクリエイテブマネジメント)への変更だ。このリーダーとなる年代は30代だろう。様々な人との出会いがあり、今までにない価値を創造する人々の登場だ。全世界に散らばる人材をかき集めたのが、工場をもたないアップルのステーブ・ジョブズだった。
2015年以降はNPOの夜明けとなる。東日本大震災はだれもが打算や計算なしに動いた。利益計算よりは被災者のために出来ることを優先した。このような社会的問題解決のために金銭を絡めないであれば、とたんに動きが速くなる。経験をつめるとなれば、NPOは将来のリーダーを育成するには最適かもしれない。
またNPOは小資本で何から何までやるとすれば事業全体をつかみやすい。さらに社会問題はグローバルな問題でもあり広がりやすく、国際感覚なども身につきやすい。企業は非営利活動を使い、新規事業のために社会ニーズをくみ取るように、自らNPOを立ち上げるようになり、有望なNPOに支援を惜しまないようになる。
以前であればビジネスリーダーの成功の花道はマッキンゼーなどのコンサルタントに勤務することだった。しかし今途上国で学校などの立ち上げなどに取り組んでいるNGOのジョン・ウッド氏はマイクロソフトの出身だし、途上国と先進国が食を分かち合う事業、テーブルフォーツーを立ち上げた小暮昌久氏もまたマッキンゼー出身なのである。